世界規模で市場が大きく揺れた2025年10月10日。現時点での情勢、経済、そして技術情報を整理し、多角的視点から今後の投資戦略を修正する。
なにが起こったのか
中国のレアアース輸出規制強化に対する反撃措置として米国は11月1日から中国に対して100%の追加関税を課すほか、「あらゆる重要ソフトウェア」を対象に輸出規制を導入すると発表した2025.10.12。同資源は米国の防衛産業や先端技術分野で不可欠とされている。
米国株式は大幅安となりVIXは2025年6月中旬来の21超まで上昇し、中でも半導体関連であるSOX指数の下落率が大きく前日比で6%超安となった。仮想通貨は円換算でビットコインが7%超安、イーサリアムが12%超安。米国債10年利回りは2.8%低下し4.034となった。
米国政府は今月から閉鎖しており、すでに米国史上で4番目の期間長さとなった。10月10日、トランプ大統領は恒久的な人員削減命令を打ち出し、民主党から不信感を集めている。政府機関閉鎖が長期化するリスクをさらに高めている。ブルームバーグ2025.10.12
中国の反応
米国の対抗追加関税に対して中国商務省は声明で「高関税での脅しを繰り返すのは、中国との正しい付き合い方ではない」とし、「中国は米国に対し、誤った行為をできるだけ速やかに是正するよう求める」と発表した2025.10.12。
また、未解決の問題に対して貿易合意を目指して協議を進めるように求めた。中国の輸出規制強化についてはそれが及ぼす影響を事前に評価していて、影響は極めて限定的との認識。また、世界の産業・供給網の安全と安定をよりよく維持していくため、各国の輸出管理に対する対話や意見交換を強化する意向を示した。
日本株式市場
日本株式市場では、10月4日に高市氏が自民党総裁に選ばれたことによる、高市トレード相場となり日経平均は45000円の壁を大きく越え48000円まで上昇した。
ほぼすべての銘柄で高値をつけ、レンジ相場を抜けて窓を開けた銘柄が目立った。大きく跳ね上げたのは、ファーストリテイリング、キーエンス、東京エレクトロン、アドバンテスト、富士通、日立、NEC、日東電工など。
しかし、週末10月10日、公明党の斉藤鉄夫代表が連立政権から離脱する方針を伝えた。
日経平均が高市トレードの中でレンジ相場となっていたところに、日本政治不安のファンダメンタルが織り込まれ時間外で日経平均先物はレンジを抜けた下落、そこに米国の対中国追加関税が表明されるという、まさにダブルパンチを受けた格好となった。
日経平均は週末10月11日時点で、45000円台前半で留めている。ドル円は週半ばで153円の円安をつけ、関税表明によりドルが急落、151円前半まで円高になった。
技術動向
- ファーウェイ、世界最強の演算システム構築へ。AIチップの長期戦略も発表 – 2025.10.6
- 中国半導体ホライズン、日系自動車がインドで初採用 ADAS向け – 2025.10.7
- 中国家電大手・美的、業界初の「AIエージェント工場」 人型ロボットも実戦投入 – 2025.10.7
- テクセンドフォトマスク、16日上場 半導体フォトマスクで世界首位 – 2025.10.8
- 新型「日産リーフ」B7を発表 – 2025.10.8
- 住友金属鉱山とトヨタ、全固体電池量産で協業 正極材で耐久性 – 2025.10.8
- ニコン、ArF露光装置の生産性1.5倍 – 2025.10.9
- Intel、18Aプロセス採用の次世代AI CPU「Panther Lake」発表 – 2025.10.9
- 家庭で使える量産人型ロボ「Figure 03」 安全性に配慮、“足でワイヤレス充電”も可能 – 2025.10.10
- 日の丸半導体ラピダス「2ナノ試作成功」でも視界不良 – 2025.10.11
考察
米国と中国の間ではすでに水面下でかなり複雑な駆け引きをしているものと思われる。まず気になるのが、両国での認識の食い違いだ。中国側は輸出規制の影響は限定的、と言っているが、米国側はそれが不服というように対抗措置の追加関税を表明した。
見方としては、米国が主導権を取りたい姿勢で、中国側は痛手ではあるが強気の姿勢をとらないといけない、このように考える。
米国が懸念しているのは中国の技術力。中国のAI技術は先端品を使えない制約の中でかなり、いや、非常に健闘している。NVIDIAのファンCEOが言うように米国が大きくリードしているわけではないことが米国の優位性を揺るがすところで、中国を制したい意向となっている。
対して中国は、世界を牛耳るべくトップの座を米国から奪いたい。しかし、技術力がおよばず、また、米国の輸出規制や関税の痛手を受ける。これが国内に知れ渡ると内政が思うようにいかないため、強気姿勢をアピールしなければいけない。
中国は現在不動産市況が悪く、これがデフレ圧力を強めていると言われている。輸出によって経済をまわしていた中国にとって、関税や他国からのプレッシャーは国内経済も圧迫する。
しかし、中国にも数少ない兆しがあると考える。それがAI関連のサービス事業だ。輸出の壁を越えられるのがAI関連のサービスで、なおかつ、中国が得意とする安くものをつくることが最大限活かせるところだからである。これの最大のメリットは実物を輸送する必要がない点だ。
米国やわが国は最先端品にこだわる傾向があるが、近年の中国はもはや別のベクトルで技術力を伸ばしている。効率性という点が物量性を優先する他先進国と違う。俯瞰してそのものをみたときに目的を達成する最短ルートを早く見つけるところが、中国の良さであると思う。
日本の立ち位置を確認する。日本は国内政治が海外視点でかなり不安定に映ると思われる。自公連立が解除され、首相指名選挙は複雑な模様を描いている。
問題は、日本が混乱していることによる、米国の主にトランプ大統領の訪日中断懸念だ。トランプ大統領が今日本に来て、誰と話すのだろうか?話す人がいなければ、あるいは、首相になったばかりの人と話すことがあるのだろうか?意見が固まってないだろうとして、中断される懸念は大いにあると考える。
日本は、米国に対して非常に遅い対応をしているが、技術に関しては米国の下に潜り込めている。また、国債を大量購入している点でも、米国は日本をあまり蔑ろにはできない状況にある。
技術に関しては、キオクシアのNVIDIA提携が大きいと考える。AIサーバー用途向けに従来の10倍のデータ転送速度をもつ高性能SSDの共同開発に取り組んでいる。これは2027年目標。
また、米国のマイクロン・テクノロジーも日本の広島で最先端メモリの量産を始める。これは日本が補助金を出している。もちろんキオクシアにも補助金がでている。
米国でAIサーバー投資が加速しているニュースが出ているが、日本でも話題になりづらいだけで開発量産は米国に引けを取らないくらい進んではいるのだ。まだ、日本は終わらない。
まとめ
とはいえ日本のAI関連銘柄は高市トレードによってやや一服感がある。月末くらいで底をつくくらいに考える。日本株は世界的にみればまだ安い水準、だろうか。技術目でみると割安の銘柄は数多くあると思う。随時記事にしていく。
米国株式もかなり高く調整が来やすい、来ている状況なので少し様子見。VIX20を超えてはいるので資産の2割程度は米国インデックス投資に追加しても良いと思われる。
とにかく、金が高い。世界情勢が荒れていることがよくわかる。バフェットが日本の商社株を買っているようにこれからはコモディティが熱くなる時代になるのかもしれない。金についてはブラックロックのインサイトに関連記事があるので近日まとめる。

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