技術、経済動向を分析する | 投資アイデアを得る – 2025.10.18

 各社の決算説明会資料から技術、経済動向を分析し、投資のアイデアを得る。特に海外売上高の高い企業を中心に分析する。

 以下は時系列古い順で並べる。

信越化学工業 (4063)

  • 2026年3月期1四半期 決算説明電話会議要旨 – 2025.7.24
  • 市況全般としては、中国からの輸出が主因で需給は緩んだままで、反転の機会は得られていない
  • AI関連分野は好調さを持続する一方で、それ以外は一部回復の兆しがあるも総じて盛り上がりに欠ける状況
  • 先端デバイス向けを中心に需要が回復している
  • 米国の需要について、住宅着工はなかなか持ち上がってこない状況
  • 一方でデータセンター等の産業分野での投資が相当に盛り上がっている
  • インドでは需要が増加傾向にあるものの、買い方の変動により月単位や四半期単位で市況がブレることがある
  • 塩ビ市況はなかなか持ち直さないが、中国が過度な価格競争を制限するような行政指導が動き出している。シリコーン以外でも全般としてそのような動き。石炭では値下げを禁止する行政指導や過度な生産に対する制約がかかり始めている
  • 先端ロジック向けデバイスは技術的難易度が高く、対応できる顧客やウエハーメーカーは限られますが、当社は品質対応に投資を続け、確実に対応していく
  • 米中問題に絡んでファブレスメーカーが中国のデバイスメーカーへの発注を中国外のデバイスメーカーに切り替える動きが、特に300mmウエハーのデバイスメーカーで散見
  • ウエハー以外の製品で関税政策にかかわる駆け込み需要はなし

ファナック (6954)

  • 2025年度第1四半期決算説明会 – 2025.7.25
  • 米国関税に関する動向を受け、一部設備投資を先送りにする動きも見られたが、全体的には需要は底堅く、受注・売上ともに堅調に推移した
  • 関税よるコスト増については基本的に価格転嫁を願っていく方針で、それに見合った価値を提供できるよう取り組んでいく
  • 自動車業界については、一部で様子見の動きがある。計画通りに投資を進めている企業も少なくない
  • その他分野でも、米国では労働力不足が続いていることから、資金に余裕がある企業では予定通りに設備投資が進められている。特に物流分野は大きなセグメントであり、需要は底堅く推移している
  • 関税が15%になると、コスト面では微妙だが、現地生産には納期短縮などのメリットがあるのは確か。現地生産の可能性は検討していく
  • すでに米国で塗装ロボットの生産をする大きな拠点を構えている
  • ヨーロッパについては依然として厳しい状況が続いている。わずかに回復の兆しも見え始めているが、本格的な回復には至っていないという印象
  • ヨーロッパではロボット、FAの順で売り上げが多く、ロボットについては自動車関連・一般産業ともに投資を控える動き
  • 中国は引き続き堅調な状況で、FAでは設備更新や自動車関連の需要が根強い
  • 中国以外のアジア地域については、国によって状況に差があり、ベトナムは非常に堅調。中国からEMSが移転する動きにより投資が進んでいて、当社によって有望な市場と考えている
  • インドも過去数年間堅調に推移し、今後も成長が期待される
  • 成長市場に対しては拠点の拡充など積極的な対応を進めていく

村田製作所 (6981)

  • 2025年第1四半期決算説明会 – 2025.7.30
  • 通期見通しは関税政策等の影響による消費動向の変化があり、上期偏重の部品需要、下期に反動があると見込んでいる
  • 電池事業では2025年の黒字化を基盤に、パワーツールやデータセンター向けに加え、タブレス構造やLFP電池技術を活用し、ESS(蓄電装置)市場への展開を目指す
  • データセンターでの事業機会の拡大ということに取り組んでいる
  • 小型大容量のセラミックコンデンサや高電流対応インダクタ、EMIフィルタ、二次電池に加え、GPU・CPU・TPU直下に搭載する高効率な垂直給電型パワーモジュールが、今後の事業機会となる
  • 地方分散型の大型データセンターやエッジコンピューティング向けの小型データセンターの拡大が進む中、当社はこれを大きな事業機会と捉え、積極的に活用していく
  • 電源モジュールは現在、最終評価段階にあり、8月末までに信頼性テストの結果が出揃う見込み。次回の決算では明確な方向性を示せると考えている
  • 2025年には総額2,700億円の設備投資を計画しており、主に建物やインフラが中心
  • 出雲やフィリピンでの新棟建設に加え、福井・滋賀にMLCC特化の研究開発拠点を2026年竣工予定で整備中
  • 6Gや光ネットワーク、ロボティクスなど将来市場に向けた米国でのスタートアップ投資も強化していく
  • 第3四半期辺りまでは、PC、あるいはサーバー系が一定けん引する見込み
  • 市場の在庫については、現在見積もりでは非常にヘルシーな状況。過多になっているという状況ではないと判断している
  • XBARは現時点でWi-Fi 7フルバンドに不可欠なデバイスで、今年は主にタブレット向けに使われている。来年以降はスマートフォンにも展開予定で、それに備えて生産キャパシティを拡大中
  • ターゲットは数ボルトでGPUやTPUを駆動する電源でGaNやSiCは不要
  • 鍵となるのは高速負荷応答特性で、そこで優位性を確保し、信頼性への懸念に対し課題を一つずつ解消してきた。採用はほぼ確実の見通し。

日立製作所 (6501)

  • 2026年3月期 第1四半期 決算説明会 – 2025.7.31
  • GlobalLogicは米国関税の間接的影響で投資抑制があったが、社内活用拡大と新規顧客の増加で成長を維持。一方、日立ヴァンタラのストレージ事業は関税と競争激化の影響で他社に売り負けた。
  • DSSセクターでは、国内DX需要が堅調に推移。大口案件や改刷対応の反動はあるが、1Q受注は順調で、通期でフロントビジネス・ITサービスともに成長見込み。
  • 海外はGlobalLogicが堅調。一方、ストレージは関税の影響で投資抑制が続き、改善効果の発現が遅れる可能性あり
  • 自動車産業の低迷や政府投資の遅れはあるが、投資が増加している分野もあり、市場全体は中長期的に堅調に成長する見通し
  • 当社のストレージ製品はハイエンドとミッドレンジに分類され、1Qではハイエンドが個社要因による投資先送りで減少、ミッドレンジは競争激化で一部売り負け。市場自体は縮小しておらず、新製品投入などで下期の挽回を図る。
  • 国内ではモダナイゼーションやDXへのニーズが依然強い。生成AIによる効率化を進めているが、IT人材は依然不足
  • 海外リソースも活用し始めているが、当面は人材逼迫が続く見通し

TDK (6762)

  • 2026年3月期第1四半期決算説明会 – 2025.8.1
  • 関税の影響として、エナジー応用製品の小型二次電池や、スマートフォン比率が高いTMRセンサは、上期に想定以上の前倒し需要の影響を受けたと認識
  • 二次電池として、収益性についても前年同期並みを確保できると考えている
  • AI関係のビジネスで、フィルムコンデンサ、アルミコンデンサ、MLCC、パワーインダクタそれぞれにおいて、幅広いラインアップを持っている。アクセラレーターボード以外のインフラ関係であったり、バックアップ電源、空調関係の電源に使われる高耐圧部品、ハイパワー部品など
  • TDKの強みを生かせる部分がまだまだあるので、AI関係の市場に向けて積極的に販売を仕掛けていく
  • 特にアルミコンデンサは先行しており、AIサーバー向けのかなり電圧の高いところに使われる部品に既に採用されている
  • 産業機器の中にはゲーム機が含まれており、ゲーム機向けのセンサや再生エネルギー向けのフィルムキャパシタを除けば回復は遅れている。ゲーム機向けで増えているのはMEMSモーションセンサ
  • 今後新製品に移行していく中で、収益性が高いものに構成が変わっていく
  • サスペンションはニアライン需要の拡大で数量増加。特に高容量品向けTri-SAの構成比率上昇により、製品ミックスは好転する見込み
  • シリコン負極は従来ハイエンドスマホ中心だったが、ミドル〜ローエンドやPC・時計にも採用拡大中。インドでは第3四半期から新工場で量産開始予定。地政学リスクも背景に、インド市場・輸出向けの引き合いが増加中

イオン (8267)

  • 2026年2月期 第2四半期(中間期)決算説明会 – 2025.10.14
  • 3つの事業、「食品小売業」「ヘルス&ウエルネス」「ディベロッパー・エンターテインメント事業」で全体収益の7割を稼ぐ体制を構築し、得られた利益を海外投資に振り向ける
  • 特に成長の著しいベトナムの比率を高め、国内外のポートフォリオをよりバランスの取れた形にする
  • 店舗の人件費構造はレジ、加工、棚割り・後方作業がそれぞれ3割ずつ占める。セルフレジ導入でレジ周りのコストを10%削減。加工では、昨年稼働したプロセスセンター「クラフトデリカ船橋」から関東180店舗への集中供給により店内作業を軽減。後方作業では、端末によるワンストップ作業やAIによるスケジューリングを導入。
  • 人時生産性は5%改善し、これは人件費上昇率3%を上回る成果で、今後SM業態にも水平展開する
  • 小売業態の競争環境と将来展望について、都市部では競合が増えているが、まいばすけっとは高密度出店によるドミナンス戦略で優位性を保てると考えている
  • 強豪との接点が増えても、密度を高めることによるドミナンス効果により、シェアを維持できる体制を築く
  • 人件費の上昇予想額に対する上期の消化率は 50%未満に収まっており、年間で400 億円増となる見込み。光熱費は当初計画の 100 億円増に対し、通期で 50~60億円程度に抑制できる見通し。物流費は前年並みで推移

まとめ

 米国に関しては依然として需要はあり、経済が滞っている印象は受けない。分析対象の企業の業種に偏りがあることも関係あるかもしれないが、全体的にインフラ、データセンター投資による需要に強い反応がある。

 また関税の影響をもろに受けているといった意見は見られなかった。自動車業界に関しては、そこまで投資が強くなく、その影響でヨーロッパは景気が低迷しているように見受けられる。EVが失速したのが痛かったか、あるいは中国EVが弾頭してきたのが痛かったか。

 各社投資意欲が高く、一段と競争力をつけていくような意気込みが感じられた。日本はやはり多角的に、堅実に、積み上げるのが”らしい”というものだろう。

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