本記事はブラックロックのインサイトより「金を手放すべからず 2025.8.25」を読み解き、現在の経済情勢に合わせ投資的アイデアを得る。
要点
- 地政学的な不透明感がある環境下では金は長期的な価値の貯蔵手段として有効である
- 米国の債務の対GDP比率が上昇する局面で金は歴史的に外的要因を受けない状態になり、金価格は米国の債務が増加するにつれて上昇する
- 世界的に政府債務が逼迫しており、公的債務がGDPを上回っている国が多い
- 公的債務が対GDP比100%に接近すると、金価格は上げ足を速める傾向にある
- 米国政策の不透明感が高まっていることと債務が記録的な水準まで拡大していることから、長期的には金を保有する合理性がある
関連情報
- 金価格は、8月末から織り込まれ9月16日~17日の米国利下げ発表に合わせて急激に上昇し、9月から現在までで20%超高となった
- 金だけに限らず、銀やプラチナも同期間で大幅な上昇となった
- 日本では住友金属鉱山が運営する菱刈鉱山での金採掘の採算性が向上している
- 廃棄スマホや電子機器からの金回収が注目されている
- アップルのiPhone分解ロボットDaisyは年間120万台の分解能力(2024年代)
- 日本は世界有数の都市鉱山として金保有国
考察
まず、米国の経済状況を確認すると、9月の利下げは雇用統計の結果から労働市場が良くないという評価の元、インフレ懸念よりもそれを優先した。一般に、利下げをするということは通貨の利回り魅力が低下し価値が下がることにより、相対的に金の価値魅力が高くなり市場価値上昇が見込まれる。
また、利下げをすると信用創造が加速しインフレ圧力がかかるため、通貨の実質的価値が下がることで金がインフレ耐資産として買われやすくなる側面がある。現代では仮想通貨もあり、安全資産かは一定の議論余地があるが、インフレ耐性資産のバリエーションも増えている。
AIインフラ投資に関連して、金の消費セグメントの工業用途が増える可能性がある。AI半導体チップ、基盤、コネクタに金は使われ、特に配線における銅の消費量が増え、銅不足が懸念されている。
いくら信用創造したところで現物が手に入らなければ、仕事が進まない。需要に対して供給が追い付いてない、コモディティ投資時代。おそらくだが、情報の流動性がLLMの登場によって飛躍的に上がった結果、投資を助長する情報が手に入りやすくなった半面、物が手に入らない物の流動の遅さが際立ってきている。これが価格を押し上げる要因になっているとみる。
手に入りにくいものをつくれる企業や物に投資をするのは合理的な判断になりえると考える。これからの金に限らず、コモディティ全般に言えることだろう。それは新興国での投資が加速していて、先進国に一歩ずつ近づいているからだ。どんなものでも欲しがる人が増えれば、価格上昇圧力はかかる。
持論になるが、技術の向上は原始技術力から離れれば離れるほどその価値は大きくなると考える。今は、畑を耕し食料を得る生き方からどれだけ乖離しているだろうか。どれほど技術格差があるだろうか。
まとめ
日本の商社株が注目されており、三井物産では米バークシャー子会社が筆頭株主になった – 2025.10.9。三菱商事も同様に買われている。この二社については、銅鉱山を操業し生産量を増やす予定だ。銅が足りていない、その現状をいち早く察知したのだろう。その情報をバフェット氏も耳にしたのだろう。
余談だが、資産運用会社ブラックロックから金鉱企業を中心とした株式を主要対象にした銘柄で厳選投資をするファンドがある。このファンドも例外なく、この上昇相場の影響を良く受けており、基準価格が上がっている。

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